《Ⅹ.各種ハーブの植物学的エピソードと世界のハーブ事情⑩》
~世界のハーブ事情~
人気のメディカルハーブは、
★ローズマリー
和名:マンネンロウ(万年郎)
「永遠の青年」を意味する和名を持つローズマリーは古くから「若さを取り戻すハーブ」「記憶力を増強するハーブ」として知られてきました。
このような言い伝えを裏付ける事としてローズマリーにはロスマリン酸などの強力な抗酸化成分が見い出されています。ローズマリーは全身性の強壮ハーブであり血液循環を促進する効果も顕著に現れます。ドイツでは食欲不振、消化機能の低下、肝機能の低下、循環不全、神経性の頭痛に用いられています。また、状況に応じて神経痛やリュウマチに単独や補助療法として用いられてきました。
ローズマリーはハーブティーやアロマテラピーでも人気です。
★ビート
和名:テンサイ(甜菜)・フダンソウ
ハーブのビートは甜菜の改良品種で地中海沿岸・西アジア・北欧が原産。
ビートの根は甜菜糖(てんさいとう)の原料になります。
ビートジュースというハーブ食品は葉と根を使用し、ビタミンやミネラルが豊富です。もともとは栄養価の高い葉が食べられていましたが古代ローマは根の部分を食用として栽培した最初の文明の一つで万能薬と考えられていました。さかのぼる事、紀元前8500年には食用とされていたことが解っています。オランダの新石器時代の遺跡、エジプトのサッカラのピラミッドからもビートの根(ビートルート)が発掘されています。
ビートルートは葉酸と鉄分の貴重な補給源となり、ビタミンCやカリウムも豊富です。
コレステロール値の安定化・心臓疾患・先天性欠損症(遺伝子異常)・大腸癌を防ぎ健康に導くハーブとして、また、腎臓・肝臓・胆のうを浄化するハーブとして、全身を強くする元気の出る強壮薬として使われています。妊娠中の女性にも適しています。現代でも、ビートジュースという、葉と根を使ったオーガニックハーブ食品を一ヶ月服用して身体の倦怠感やむくみがとれた事例も有ります。
★ホーリーバジル
和名:カミメボウキ 別名:タイバジル
シソ科メボウキ属の一年草です。
ヒンズー教では古くから聖なる薬草とされてきました。
バジル(メボウキ)の種を水につけてできたゼリー状の物質が洗眼用に使われてきた事からメボウキ(目を掃除するホウキ)と名づけられました。
生葉をサラダにして食したりします。薬効のある成分を凝縮してフリーズドライした良質なオーガニック食品では副腎の健康とストレスの緩和に使われています。
※乳児や妊娠中の方のご使用は医師にご相談ください。
★ビロウドモウズイカ
別名:マレイン コモンマーレイン キャンドルウィック
ゴマノハグサ科モウズイカ属の二年草もしくは多年草です。
マレインは古代には災厄や病気から身を護ってくれるハーブとして知られていました。悪魔を追い払う為に修道院の庭に植えられたり、旅に出る時は安全のお守りとして携帯されていました。古くから暗黒の力から身を守り、光をもたらす特別なハーブとされており、良い魔女(白魔女)が悪い魔術(黒魔術)から身を護る為に儀式の時に使ったと言い伝えられ、ギリシャ神話にも出てきます。
現代では喘息の鎮静・喉の痛みの鎮痛作用、呼吸器障害や副鼻腔炎、慢性カタル、花粉症の諸症状の緩和という植物の薬効が解っており有用視され使われています。ハーブ療法としては身体から熱やうっ血を取り去るのにも使われます。何世紀にもわたり肺炎、気管支炎、結核の治療に使われてきた歴史があります。実際、アイルランドでは肺病(結核)の治療に使う為だけに多くの家庭の庭で育てられていました。
★アロニアベリー
和名:西洋カマツカ 別名:ブラックチョークベリー チョークベリー
バラ科アロニア属の植物であるアロニアベリーは北アメリカ大陸東部原産の耐寒性の落葉低木。
小さな黒い果実をつけ、花は梨の花に似た白い花です。アントシアニンやポリフェノール、ビタミンB、C、鉄分、食物繊維などを豊富に含んでおり植物の成分による薬効から心臓・免疫系・尿路の健康維持、抗糖尿病、ダイエットなどに使われるハーブです。
血糖値がすぐ高くなってしまう高齢者がアロニアベリーで改善された報告も有ります。
※参考文献
・メディカルハーブ輸入元資料
・「花の持つ癒しの魅力」産調出版;アン·マッキンタイア:著
・「メディカルハーブの事典」東京堂出版;林真一郎:編集
・「はじめてのハーブ手帳」㈱メディアパル:発行
・「美しい花と香りを楽しむハーブ図鑑200」主婦の友社
・「心と体に効くハーブ読本」佐々木薫 著