Ⅲ.各種ハーブの植物学的エピソードと世界のハーブ事情③
~世界のハーブ事情~
人気のメディカルハーブは、
★ネトル
和名:イラクサ
植物療法で花粉症などのカタル症状に内服で使用されるのがネトルです。ネトルは花粉症の症状を落ち着かせる他に、授乳期の母乳の分泌を良くしたりすることで知られています。また、血液中の尿酸を排出させる事が解っていますのでリュウマチなどの治療薬として使用されてきていました。現代では、鉄分をはじめ、マグネシウムなどのミネラルを多く含みますので、鉄分不足による貧血気味の方に健康補助食品として利用される事も多くなってきています。植物に含まれるフラボノイドや葉酸は、優れた抗酸化物質であり、現代人の不足しがちな栄養のバランスコントロールに役立てられています。古代からの伝承医学では血液浄化剤として珍重されてきたハーブです。
★ソウパルメット
別名:ノコギリヤシ
ヤシ科の植物でノコギリのような葉を持つ植物です。夏に開花し、冬に2~3センチのオリーブ大の実をつけます。好みは、古くから重要な食糧源、及び男性の泌尿器疾患の為に北米のインディアン部族の間で使用され、中国でもシュロシという名で泌尿器疾患の治療薬として、強壮・利尿目的で使われてきました。ヨーロッパでは、19世紀初めにお茶として前立腺肥大症の治療に使われ、果実の油性成分が前立腺肥大による排尿障害に有効な事から、今日では医薬品として処方されています。ドイツでは薬局などで販売されているほど一般的です。前立腺肥大の患者によるソウパルメット抽出物の臨床試験では、夜間トイレに行く回数の減少・痛みの軽減・尿速度の増加の結果が出ています。
★バードック
和名:ゴボウ
キク科ゴボウ属の植物。ヨーロッパ・シベリア・中国東北部原産。日本には千数百年前に薬草として渡来しました。食用としているのは、日本・韓国のみで他の国では主に薬草として用いられています。食物繊維が豊富なので便秘の人には助かる植物です。また、そのゴボウの食物繊維の中でも特に注目されているのがイヌリンとリグニンです。
イヌリン・・・水溶性食物繊維。整腸・血糖値のサポートの他、ビフィズス菌の成長を促します。
リグニン・・・不溶性食物繊維。悪玉コレステロールの排出を促します。
★バレリアン
和名:西洋カノコソウ
オミナエシ科カノコソウ属の植物。ヒポクラテスの時代から不眠症に使われてきたハーブです。現在では世界各地で神経性の睡眠障害に役立てられています。日本には江戸後期にオランダから渡来しました。バレリアンはGABAの代謝に関与するという報告も有り、通常の睡眠薬に比べて眠りの質の点でも優れているとされます。また、バレリアンの便利なところは、就寝前だけでなく、不安や緊張を和らげる目的で日中に服用する事も可能な点です。
★パッションフラワー
和名:チャボトケイソウ
トケイソウ科の植物。アメリカ先住民のチェロキー族やメキシコのアステカ族が用いた歴史が残っています。精神安定、鎮静ハーブに分類されますが作用が穏やかである為、小児・老人・更年期の女性などでも安心して使える「植物性の精神安定剤(トランキライザー)」として知られています。科学的研究によれば精神的な緊張やそれに伴う不眠を改善し、神経性の頻脈を抑えます。痛みの領域にも用いられ、頭痛・歯痛・生理痛などの激しい痛みを和らげる目的で使われてきたハーブです。パッションフラワーは単独でも用いられますが、ドイツでは精神安定や不眠にレモンバームやバレリアンとブレンドして使ったり、また、マイルドな強心剤としてホーソン(西洋サンザシ)とブレンドして使ったりします。
※参考文献
·メディカルハーブ輸入元資料
·「花の持つ癒しの魅力」…産調出版;アン·マッキンタイア:著
·「メディカルハーブの事典」…東京堂出版;林真一郎:編集